事業が順調に動き始めると採用を考えることになります。初めの採用は、パートや契約社員などの有期雇用から始めるケースも多いことでしょう。ここでは有期雇用契約の概略とパートタイム労働について説明しましょう。
〇ポイント
対象:雇用契約のうち、期間を定めた契約の人・パートタイム労働者
時期:在籍期間中
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有期雇用とパートタイム労働者
有期雇用契約の雇用期間
有期雇用契約の労働条件通知
説明義務
無期雇用契約へ
まとめ
有期雇用とパートタイム労働者
雇用期間を定めた契約を、有期雇用契約といいます。またパートタイム労働者とは、同一の事業所に雇用される通常の労働者(フルタイム労働者)に比べて、1週間の所定労働時間が短い労働者を指します。パートタイム労働者は、事業所によりスタッフやパートなど呼称は様々です。ただしパートタイム労働者の中には、契約期間を定めた有期雇用契約と定めのない契約の二種類があります。
パートタイム労働者は、パートタイム労働法を始めとした労働法で保護されています。このパートタイム労働法は、パートタイム・有期雇用労働法に統合されますが、この法律の中小企業への適用は2021年4月となります。
有期雇用契約の雇用期間
有期雇用契約の場合、1回の契約における契約期間の上限は次の通りです。
契約内容 | 契約期間の上限 |
下記の特例に該当しない契約 | 原則 上限3年 |
(特例) | |
専門的な知識、技術又は経験であって高度なものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される雇用契約 ※ | 上限5年 |
満 60 歳以上の労働者との間に締結される雇用契約 | 上限5年 |
必要な期間 一定の事業の完了に必要な期間を定める雇用契約(有期の建設工事等) | 事業完了に必要な期間 |
※医師や公認会計士など 参照
この契約期間の上限は、フルタイムの有期雇用契約でも短時間勤務のパートタイムでも共通の考え方です。なお、上記はあくまでも1回あたりの雇用契約の上限を定めたものであり、本来契約期間は労使で任意で定めることができるものです。
中には1か月更新にすればよいと考える事業主もいるかもしれません。ただし短期間の契約更新は労働者にとって雇用が不安定になります。1回以上更新し、かつ1年を超えて継続勤務している場合は、事業主は雇用実態や労働者の希望に応じて契約期間を長くする配慮義務がありますので留意しましょう。
この有期雇用契約とは、締結した期間は労使共に雇用を継続する義務が生じます。契約期間の途中での雇用契約の一方的な解約は出来ません。ただし契約が1年を超える有期雇用契約で、実際に1年を経過した日以後であれば、労働者側からの退職の申し出による退職は可能です。事業主からの申し出は本来認められておらず、相手方に対して損害賠償の問題が生じることもあります。
有期雇用契約の労働条件通知
有期雇用契約の労働条件通知には、以下の記載が必要です。このうち7と8はパートタイム労働者に特有の明示事項です。

有期雇用契約の場合、契約の締結時にその契約の更新の有無について、以下の該当する内容を明示します。
- 自動的に更新する
- 更新する場合があり得る
- 契約の更新はしない
更新する場合があると明示したときは、必ず契約更新の有無に関する判断基準を記載します。
例えば以下のような判断基準が考えられます。
- 契約期間満了時の業務量による
- 労働者の勤務成績、態度による
- 労働者の能力による
- 会社の経営状況による
- 従事している業務の進捗状況による
契約締結の際に、更新しない旨の明示が無いまま、事業主の意向により契約期間を持って満了としたい場合もあることでしょう。この際には、満了日の 30 日前に更新しない旨の予告を労働者に伝えなくてはいけません。なお、この予告は以下のような継続した労働者を対象とします。
- 雇用契約を3回以上更新しているとき
- 1年以下の契約期間の雇用契約が更新され、最初に雇用契約を締結してから継続して通算1年を超える場合とき
- 1年を超える契約期間の雇用契約を締結しているとき
なお、最初から2か月以上の雇用契約を締結する場合、社員の3/4以上の契約であれば契約当初から社会保険に加入します。
パートタイムといえども1日8時間を超えて労働する際は、割増賃金の支払が生じます。有給付与が10日以上の労働者に対して、5日の消化義務がある点も、社員など定めが無い契約と同様です。
配慮義務など
事業主は、パートタイム労働者に対して、以下の点で配慮が必要です(今後改正予定)。
- 賃金・・正社員との均衡を考慮し、職務の内容、成果、 意欲、能力、経験などを勘案して決定する(努力義務)。
- 教育訓練・・ パートタイム労働者と正社員の職務の内容が同じ場合、教育訓練を、正社員などと同様にパートタイム労働者にも実施する。
- 福利厚生 ・・・給食施設、休憩室、更衣室について、正社員などと同様にパートタイム労働者に利用の機会を提供する(配慮義務)。
無期雇用契約へ
有期雇用契約は、契約期間の人員確保などの面で非常に有効な手段ですが、労働者は不安定な契約が続くものです。これを防ぐために、有期雇用契約から無期雇用契約(期間の定めのない契約)へのルールが定められています。

有期雇用契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期雇用契約に転換させなければなりません。つまり、申込があると転換義務が生じ、申込が無い場合は引き続き有期雇用契約を継続できます。
また雇用契約期間の間に6か月以上の空白期間(クーリング期間)があると、契約期間はリセットされ通算されません。
あくまでも義務は無期雇用契約(期間の定めのない契約)への転換であり、労働条件は任意で定めることが可能です。
まとめ
契約が反復更新され、かつ更新を期待させる言動があった場合において、次の契約更新をしないことは労働紛争に繋がりやすいものです。次の更新に関しては、労働者に期待を持たせないように普段からの言動を慎重にしつつ、雇い止めの際は、早めの通知を心掛けましょう。