従業員を雇用する際、賞与を支払うこともあります。給与は無理のない範囲で支払し、売り上げにより賞与で利益を還元することも多いようです。前半は賞与に関する社会保険の届出を説明します。
後半は健康診断について確認しましょう。労働安全衛生法により、事業主は労働者に対して医師による健康診断を受診させる義務があります。
〇ポイント
対象:労働者ごと
時期:賞与支払のつど(賞与支払届)、年に1回(健康診断)
〇メニュー
賞与支払届
- 賞与の定義
- 標準賞与額と上限
健康診断の実施義務
健診の種類と負担
まとめ
賞与支払届
社会保険を成立させた際には、事業所として賞与を何月に支給するか登録します。この支給月の前月には賞与支払届が事業所に届きます。届いた賞与支払届に被保険者ごとの支給額を記載し、賞与支払届総括表に合算の支給額を記載の上、セットで年金事務所(広域事務センター)などに届出します。提出期限は支給日より5日以内です。
なお、賞与支給が無い場合は、支給なしの賞与支払届総括表の届出が必要です。
給与では標準報酬月額に基づいて保険料の負担が生じました。賞与についても標準賞与額という考え方に基づき保険料が生じます。
賞与の定義
名称に関わらず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものをいいます。なお、年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象(つまり給与扱い)とされます。また、結婚祝い金など恩恵的なものは対象外です。
標準賞与額と上限
標準賞与額とは、賞与総支給額から1,000円未満を切り捨てた額のことです。賞与の保険料は、この標準賞与額に保険料率を掛けて決まります。その保険料に対して労使が折半で負担します。
ただしこの標準賞与額には上限があります。健康保険では年度の累計額573万円(年度は毎年4月1日から翌日3月31日まで)、厚生年金保険は1か月あたり150万円です。同月内に2回以上支給されるときは合算した額で上限額が適用されます。年間の賞与支給額が多い場合は、年に2回賞与を1回にし、上限を超える支給額にすると、保険料負担は少なくなるでしょう。
従業員に賞与を支給したときの手続き | 日本年金機構
健康診断の実施義務
安全衛生法では、事業主に実施健康診断を義務づけています。

この受診義務は、常時使用する労働者であり、正社員や契約社員、フルタイムパートなどが対象です。ただし短時間のパート契約の場合は、下記に該当していれば対象となります。
- 1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上

個人事業法人事業に関わらず、一般健康診断を受診する際の労働時間は、無給でも構いません(就業規則がある事業所はその定めに沿います)。つまり受診させる義務はありますが、その時間分の賃金は、事業所の判断が可能です。有給休暇を使用して受診させることもできるでしょう。
ただし実務上無給の場合、受診しない労働者が生じることが多いものです。出来る限り通常の勤務をしたものとみなし賃金を支払うことが良いでしょう。事業主は受診を促すことが義務ではなく、実際に受診させることまでが義務なのです。
健診の種類と負担
個人事業で従業員が5人未満など社会保険加入をしていない事業所でも、健康診断の受診義務は生じます。年に1回受診させ、その費用は会社で負担します。
社会保険の加入事業所では、健康診断の受診費用に対して健康保険保険者(つまり協会けんぽなど)が一部受診費用の補助をしています。この補助については保険者ごとに定めているため、大企業が入っている健康保険組合では年齢に関わらず補助をしているケースが多いようです。ただし中小企業が加入している協会けんぽは加入人数が非常に多いため、全年齢を対象に補助される訳ではありません。一般健診の内容で補助が無い労働者(35歳未満の方)については、事業主の費用負担が必要です。
協会けんぽの補助を用いて被保険者が受診できるものは以下の通りです。
- 一般健診(生活習慣病予防検診)
診察や尿、血液を採取しての検査、胸や胃のレントゲン検査など約30項目の全般的な検査。補助対象者は、被保険者で当該年度において35歳~74歳。
- 付加健診
一般健診から追加で検査項目を増やしたもの。 補助対象者は一般健診を受診する対象者のうち、当該年度において40歳及び50歳限定。
- 乳がん・子宮頸がん検診
問診・乳房エックス線検査(マンモグラフィー)による乳がん検査、子宮細胞診(スメア方式)による子宮頸がん検査。 補助対象者は、一般健診を受診する40歳以上の偶数年齢の女性のうち、受診希望者のみ。
※40~48歳と50歳以上では負担額に相違あり。
- 子宮頸がん検診(単独受診)
問診・子宮細胞診(スメア方式)による子宮頸がん検査。 補助対象者は、20~38歳の偶数年齢の女性のうち、受診希望者のみ。
※36歳~38歳は一般健診と併せて受診が可能。
- 肝炎ウイルス検査 任意検査で、事業所や保険者を介せずに受診可能。
協会けんぽの補助を用いて労働者の被扶養者が受診できるものは以下の通りです。
- 特定健康診査
特定健診は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の病気のリスクの有無を検査する。リスクがある場合は、生活習慣をより望ましいものに変えていくための保健指導の受診を目的とした健康診査。 補助対象者は、40歳~74歳の被扶養者。
健康診断の申し込み方法や料金については、協会けんぽなど保険者のHPを確認しましょう。
協会けんぽの場合、35歳以上の被保険者様を対象とした生活習慣病予防健診(一般健康診断)の案内は、毎年3月頃に事業所に郵送で届きます。各自健診機関に予約をして受診させましょう。
ご存知ですか?「生活習慣病予防健診」 と 「事業者健診」の違い | 協会けんぽ
申し込み方法 | 協会けんぽ
料金 | 協会けんぽ
申込書の廃止について(生活習慣病予防健診) | 協会けんぽ
まとめ
賞与支払は事前に書類が届きますが、支給日以後に提出する必要があります。忘れずに提出しましょう。また健康診断は労働者の健康を管理する上で非常に重要です。受診後、健診結果の提出を促し、身体に問題が無いか確認するとともに、問題が生じている際は再検査および労務負担の軽減などを考えていきましょう。