人を雇用する際には、労働法の知識が必要です。今回は労働契約の中でも退職について解説します。
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対象:労働者
時期:労働者の退職の際
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退職について
- 任意退職
- 解雇
- 定年退職
まとめ
退職について
雇用契約の終了である退職には総じて3種類があります。
- 任意退職
- 解雇
- 自動終了
一般的に任意退職とは、転職などの自己都合退職であり、自動終了とは定年や有期雇用契約(初めから期間を定めて契約している契約)の期間満了を指すものです。
有期雇用契約の満了については、「有期雇用で契約する」で解説します。ここでは他の退職事由について説明しましょう。
任意退職
労働者自身の自由意思による退職は、労働基準法上は何も規定がありません。契約時に締結する労働条件通知や就業規則で、退職日の1ヶ月前までに申し出などの要件を記載することになります。もしこれらに記載がないときは、民法を根拠とするため、その意思表示から2週間で退職が認められることになります。
実務上、退職者の後任も補充採用が求められ、引継ぎも行う必要があります。必ず労働条件通知にはいつまでに申し出をする必要があるか記載を行いましょう。
解雇
解雇とは、使用者の一方的な意思表示により労働契約を終了させることです。
- 普通解雇(整理解雇、懲戒解雇以外の解雇)
- 整理解雇(会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇)
- 懲戒解雇(懲戒処分としての解雇)
労働者保護のため、労働契約法では、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、無効であると定めています。
日本では金銭解雇が認められておらず、解雇には非常に厳しいハードルが設けられています。解雇の理由として、勤務態度に問題があるなど労働者側に問題がある場合がありますが、紛争になった際は、問題の程度や内容、会社が被った損害や、問題に対する重ねての指導など、色々な背景を考慮し、解雇が有効か裁判所が判断することになります。
多くのケースでは解雇不当と判断され、その間の未払い賃金や、解決金として多額の金銭を労働者側に支払っています。簡単に解雇ということは厳禁で、書面を交わしながらの丁寧な指導を繰り返し、労働者へ改善を促すことが必要です(パワハラに当たらない指導を行いましょう)。
また、業績不振による整理解雇は、以下を全て満たすことが求められています。
整理解雇の四要件
1.経営上の必要性
倒産寸前に追い込まれているなど、整理解雇をしなければならないほどの経営上の必要性が客観的に認められること。
2. 解雇回避の努力
配置転換、出向、希望退職の募集、賃金の引き下げその他、整理解雇を回避するために、会社が最大限の努力を尽くしたこと。
3.人選の合理性
勤続年数や年齢など解雇の対象者を選定する基準が合理的で、かつ、基準に沿った運用が行われていること。
4.労使間での協議
整理解雇の必要性やその時期、方法、規模、人選の基準などについて、労働者側と十分に協議をし、納得を得るための努力を尽くしていること。
店舗閉鎖の際の整理解雇も、多店舗への異動などの取り組みは必要です。
なお、解雇の際には、30日以上前の解雇予告か、30日分以上の平均賃金の支払が必要です。この支払が不要な労働者は以下に限られています。ただし解雇予告の支払と解雇が相当であるという判断は別です。解雇予告手当の支払=解雇有効とはなりません。

解雇には30日以上前の予告が必要です | 厚生労働省
解雇に関する相談 | 長野労働局
定年退職
定年退職は自動終了の一つですが、現在定年を定める場合はは60歳を下回ることはできません。また定年後も65歳までは継続した雇用が義務つけられています。
この高齢者雇用確保措置としては、以下の3つがあります。
- 定年の引上げ
- 継続雇用制度の導入及び
- 定年の定めの廃止
また今後の少子高齢化を見据え、政府は今後70歳までの雇用確保を求めていく方針です。就業規則や労働条件通知書に定年に関しての定めをしていない場合は、定めが無いものとして100歳になっても就労ができる契約になってしまいます、もし記載が漏れている場合は、早急に定年を検討しましょう。
65歳までの「高年齢者雇用確保措置」 | 熊本労働局
まとめ
残念なことに、中小企業では違法な解雇が蔓延しており、労働者から解雇不当や賃金未払などで訴えられるケースが多発しています。それは事業主の労働法に対する知識が不足していることが大きな原因です。裁判は金銭もかかりますが、時間や心理的負担も大きいものです。リスクを最小限に抑えるためにも、日本では解雇は非常に難しいという認識を必ず持つ必要があるでしょう。