人を雇用する際には、労働法の知識が必要です。今回は労働時間と休日などの考え方を中心にお話ししましょう。
〇ポイント
対象:労働者
時期:採用を考えたら
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労働法について
採用時の注意点
労働条件の明示
労働時間
- 労働時間
- 休憩
- 休日
- 年次有給休暇
まとめ
労働法について
労働法は、労働基準法、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法など様々な労働問題に纏わる法律の総称です。本来、労働者との間で交わされる雇用契約は、双方の合意で決定するのが基本の考え方です。
ただし、実際には労働者は立場が弱く、その保護を図るために法律で労働条件の最低基準を定めています。労働基準法には罰則もあり、もし労働者と事業主が双方の合意の上で、最低基準に達しない労働契約を結んだとしても、無効になります。そして法律と同じ定めをしたものとみなされます。労働法は任意法規も多いのですが、労働基準法のほか、最低賃金などが強行法規(これに満たない契約は無効となり法律と同じ定めが適用される)となっています。
採用時の注意点
人材の募集および採用の際は、幾つかの禁止事項と配慮すべき点が複数あります。
禁止事項
- 年齢制限の禁止
- 性別を理由とする差別の禁止
- 募集・採用に当たって、労働者の身長、体重または体力を要件とすることなど
(間接差別の禁止)
- 障害者であることを理由とした障害のない人との不当な差別的取扱いの禁止
例えば、従業員を募集・採用する際に、「40歳未満の者に限る」など、年齢制限をすることが禁止されています。また男性のみ募集など性別を限定して募集することも禁止です。下記参照を確認し、違反とならないように注意しましょう。
なお、採用後、年少者や未成年に対する労働は、法律により一部制約があります。例えば18歳未満は深夜勤務が禁止されています。併せて確認しておきましょう。
配慮すべき点
右に丸がある場合は、配慮不足です。再検討が必要でしょう。

公正採用選考ハンドブック | 鳥取労働局(ほか)
男女均等な採用選考ルール | 厚生労働省
その募集・採用年齢にこだわっていませんか? | 厚生労働省
高校生等を使用する事業主の皆さんへ | 厚生労働省
事業主のみなさまへ(障害者差別の禁止) | 厚生労働省
労働条件の明示
労働者を雇用する際には、賃金・労働時間その他の労働条件について書面で明示しなければなりません。トラブルを防ぐためにも、労働基準法では最低限の明示内容を定めています。

この他にパートタイムの契約の場合は、以下の4点についても書面明示が必要です。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口
開業して間もないため、これらの支給が無いときは、支給なしと記載します。
事業所の労働者が10人を超えると就業規則を定めて労使協定を結び、労働基準監督署に届け出をすることになります。就業規則を作成した事業所では、労働条件明示は就業規則で代替することもできます。
労働時間
労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間です。
労働時間
法律では原則として1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40 時間以内と定めています(特掲事業を除く)。
休憩
法律では、1日の労働時間により、休憩時間を与えないといけません。
- 6時間を超える場合には少なくとも 45 分
- 8時間を超える場合には少なくとも 60 分
またこの休憩時間は、以下のルールがあります。
- 労働時間の途中に与える
- 一斉に与える
- 自由に利用させる
つまり、学校の休憩時間のように労働者が一斉に休みを取ることが原則です。ただし実際の業務では、数名で分けて休憩をとることも想定されます。その場合は、労働者との間で労使協定と呼ばれる書面を締結し一斉付与の適用除外を受けることが必要です(労使協定が無い場合は、法違反の状態)。
休日
労働義務を免除されている日を休日といいます。毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければいけません(これを法定休日といいます)。
この休日は、原則として午前0時から午後12時までの継続24 時間の暦日で与えなければなりません。1時間でも勤務をした場合は、休日出勤となるため休日を与えたことにはなりません。
年次有給休暇
雇用開始日から6カ月間継続勤務して労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、雇用開始日の6カ月後を付与日として、10労働日の有給休暇が付与されます。翌年以降も、この付与日に、次の指定日数が付与されます。雇用開始から6年半経過すると20日が付与されます。また次の付与日までに消化できなかった日数は、翌年度に限り繰り越しが可能です。

パートタイマーで、週30時間未満かつ4日以下の契約では、付与日数は比例付与されます。

この有給を労働者が取得する際は、原則として労働者の指定する時季に与えなければなりません。しかし、繁忙期などにより事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に変更することができます(時季変更権)。また2019年からは10労働日以上付与されている労働者には、年間5日間の消化が義務になりました。罰則もありますので、管理を正確に行いましょう。
年5日の年次有給休暇の確実な取得 | 厚生労働省
まとめ
今回は労働法の中でも採用から労働時間と休日を中心に説明しました。記載したものは原則的な考え方です。ここを押さえた後に、変形労働時間やフレックスタイム制などの労働時間管理を考えると自分の企業に合った労働時間は何か、良いアイデアが起こるでしょう。基本を押さえて次のステップにつないでいきましょう。