人を雇用すると給与計算をして賃金を支払うことになります。今回は給与明細の見方と控除項を中心に解説します。

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対象:労働者

時期:雇用期間中

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給与明細

保険料と労働者負担

税扶養の人数と所得税

まとめ

給与明細

給与明細は3つの項目から構成されています。

  • 勤怠項目
  • 支給項目
  • 控除項目

勤怠項目は、出勤日数や有給日数、残業時間などタイムカードの集計情報を入力します。

支給項目は、基本給や手当、遅早控除など課税非課税の支給情報を入力します。プラスばかりではなく欠勤減額や遅刻早退などのマイナスも含みます。通勤交通費は、非課税になることが多いものですが、保険料の対象となり、支給項目で支払をします。

控除項目は、社会保険料の本人負担や所得税、住民税などの控除情報を入力します。また税金に影響しない親睦会費や社宅の本人負担額も、この控除項目で控除します。

支給項目から控除項目を差し引いた金額が振込金額(差引支給額)になります。

保険料と労働者負担

社会保険料は、以下のような労使負担が原則です。なお、雇用保険は毎月の交通費も含めた支給額から保険料を計算しますが、健保介護年金保険料は、標準報酬月額から保険料が決まります。

 事業所負担労働者負担
健康保険折半負担 折半負担
介護保険 折半負担 折半負担
厚生年金保険 折半負担 折半負担
こども手当拠出金34/1000
雇用保険6/10003/1000※一般の事業の場合
労災保険全額負担

標準報酬月額・標準賞与額とは? | 全国健康保険協会

所得税と税扶養の人数

所得税の計算は、労働者の就労状況により計算方法が変わります。

1か所のみで働いている労働者は、多くは月額表を用いて所得税を計算します。この月額表は、次のような給与を支払う場合に使用します。

  • 1月ごとに支払うもの
  • 半月ごと、10日(旬)ごとに支払うもの
  • 月の整数倍の期間ごとに支払うもの

「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人は「甲欄」を、その他の人(扶養控除等申告書の未提出者、ダブルワークでメイン就労ではないときなど)は「乙欄」を使って税額を求めます。この所得税額の求め方は対象者の扶養人数によっても変わります。

税扶養人数が多いと、所得税の金額は安くなります。税額の算出にあたり、下記のように様々な要件ごとに人数をカウントし、その合計人数を求めましょう。要件の詳細な説明は、国税庁のHPを参照してください。

扶養親族

扶養親族とは以下全てを満たす親族のことです。

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
  • 納税者と生計を一にしていること。
  • 年間の合計所得金額が48万円以下であること。

 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

ただし、その中で中学生までの子どもは年少扶養と呼ばれており、税金の扶養人数にはカウントしません。

なお、扶養親族の考え方では扶養親族の所得が48万以下であれば、労働者本人の所得は関係ありません。年少扶養を除く扶養親族の人数1人=給与計算の扶養人数1人としてカウントします。

扶養控除 | 国税庁

源泉控除対象配偶者

扶養親族とは違い、税扶養の配偶者を考える上では、労働者本人の所得も影響を及ぼします。給与計算の上では、下図のオレンジ部分(源泉控除対象配偶者)に該当する場合に1人としてカウントしてください。なお、所得税の配偶者とは戸籍上の配偶者を示し、事実婚は対象外です。

障害者

納税者自身や同一生計配偶者(上図参照)又は扶養親族が所得税法上の障害者に該当すると、給与計算の扶養人数1人としてカウントします。ただし障害が重く、特別障害に該当するときは2人としてカウントします。

障害者控除 | 国税庁

寡婦(寡夫)

寡婦(寡夫)に該当すると給与計算の扶養人数1人とカウントします。2020年時点では未入籍の人は対象外となっています。

寡婦控除 | 国税庁

所得税の計算

扶養人数の合計が算出された後、給与から所得税を計算します。月給やパートタイマーなどの契約では月額表を用います。

労働者のその月の給与支給額金額(課税支給合計※非課税を除く)から、社会保険料を控除した金額(その月の社会保険料控除後の給与等の金額)を求めます。

「扶養親族等」の人数と「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」を「給与所得の源泉徴収税額表」に当てはめ、その月の所得税を計算します。

源泉徴収税額表 | 国税庁

まとめ

保険料と所得税の徴収については本来複雑な知識が必要ですが、給与計算ソフトを用いると簡単に金額が算出されます。法律改正が頻繁にある部分ですので、できる限りソフトを用いて計算しましょう。また1月の給与(所得税税額の改正)、4月、10月の給与(社会保険料の改正)など年間の中で控除額が変わるタイミングもあります。該当する月は他の月よりも注意を払って計算をしましょう。