人を雇用すると給与計算をして賃金を支払うことになります。今回は給与計算の単価を中心に解説します。

〇ポイント

対象:労働者

時期:雇用期間中

〇メニュー

労働日数と労働時間

有休・特別休暇

割増単価と遅早控除

振休と代休

まとめ

労働日数と労働時間

給与計算を行うには、まず事業所の年間労働日数や総労働時間について確認をします。毎週土日祝日が休みと決まっている事業所では、年間の労働日が年により異なるはずです。逆に曜日で決めずに年間休日を110日など特定の日数で決めている事業所では、祝日の多い年は土曜日が数日出勤日となっているかもしれません。

また夏休みや年末年始は、事業所として特別休暇でしょうか。それとも有給休暇を取得して休みを取らせますか?年間の労働日数を考える際には、事業所の休みに対する考え方を整理する必要があるのです。

例えば、年末年始休暇を併せて年間110日休みの事業所では、

365日-110日=255日が年間労働日数です。

所定労働時間が1日8時間の場合、 8時間×255日=年間2,040時間が総労働時間になります。

このように年間休日の日数を決めていると、閏年以外は年間労働日数と労働時間に変更はありません。なお、この年間の始期は事業所で任意に定めることができますが、昇給月や36協定の始期、会計の期首に併せて決めていることが多いでしょう。

また給与計算を行う上では、単価を出す際に、年間平均を用いるか、月平均を用いるかも重要です。上記のケースで年間平均を用いると、

年間労働日数255日÷12カ月=21.25日が月平均の労働日数。

1日8時間×21.25日=170時間が月平均労働時間となります。

平均にするということは、月の残業単価や遅刻早退の単価を統一するという利点があります。

土日祝日休みの事業所で平均を用いない場合は、連休の多い5月と、祝日のない6月では単価が異なります。

平日17日間の年の5月の労働時間  1日8時間×17日=136時間

平日22日間の年の6月の労働時間  1日8時間×22日=176時間

基本給と手当込みで200,000円の人では、

5月の遅刻早退の1時間あたりの単価は200,000÷136時間=1,470円

6月の遅刻早退の1時間あたりの単価は200,000÷176時間=1,136円

このように300円を超えて単価が変わります。

これを平均を用いて計算する場合、 200,000÷170時間=1,176円が両月の共通した遅早控除の単価です。

平均がよいか、その月の暦から計算するかは事業所が決めることですが、就業規則や労働条件通知書で労働者に事前に周知する必要があるため、雇い入れ前に最初に決めておく必要があります。

有休・特別休暇

有休とは、本来労働すべき日の労働を免除するものです。付与日数は労働基準法で定められています。具体的な日数は給与計算の基礎知識1を参照なさってください。

特別休暇とは、有給とは異なり、事業所が特別に認めた休暇(例えば夏季休暇や年末年始休暇、創業記念日など)や法律で定めた一部の休暇(例えば生理休暇や介護休暇、子どもの看護休暇など)をいいます。特別休暇は事業所が認めた休暇ですが、その時間分の給与の取り扱いは事業所が任意で決めることができます。つまり労働条件通知書や就業規則で特別休暇については無給としている場合、特別休暇の取得をすれば給与は当然減ります。それを回避するために労働者は特別休暇ではなく有給を取得すれば、賃金減額はありません。

割増単価と遅早控除

残業の際の割増率については、給与計算の基礎知識1に記載しました。ここでは具体的な例を説明しましょう。

労働条件 1日8時間、週5日勤務土日休み 月平均170時間 月平均21.25日のケース

基本給と手当で200,000円 支給の人

200,000÷170時間=1,176円

これが1時間当たりの単価です。つまりこの単価が最低賃金を超えていないといけません。

この100%賃金は遅刻早退の単価になります。

1,176円×1.25=1,470円

これが25%割増の単価です。平日の8時間を超えた時間や土曜日の22時までの勤務に使います。

1,176円×1.35=1,587円

これが35%割増の単価です。連続勤務の7連勤目のとき(イメージとしては土日連続出勤の日曜日)に使います。

1,176円×1.5=1,764円

これは土曜日の深夜残業勤務で使います(25%割増+深夜の25%割増)。

1,176円×1.6=1,881円

これは日曜日の深夜勤務などで使います(35%割増+深夜25%割増)

これらの単価は、労働時間から算出されるため、前項で説明した月平均の使用の有無により、単価は大幅に変わります。

振休と代休

「休日の振替」とは、本来の休日と労働日を事前に指定して入れ替えることです。この場合もともとの休日に労働しても「休日労働」とはならず、割増賃金の支払義務も生じません。

「代休」とは、休日労働を先行して行い、その後特定の労働日を休みとすることです。休日を具体的に指定する前に労働をしているため、振替にならず、休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。法律上、振替休日とするには同一週内の振替が原則です。

労働時間と休日休暇 | TOKYOはたらくネット(52ページ図解を参照のこと)

まとめ

今回は具体的な計算のための単価を中心に説明しました。事業所の労働時間は、給与計算ソフトを設定する際に必ず必要な知識であるとともに、理解していない事業主も多いものです。特に平均を用いるかどうかは実際の手取り額に影響する部分です。労働者に正しい説明が出来るよう事前に決めておきましょう。